はじめに——「コンサルタントはAIに代替されるのか」という疑問
選考や面談の場で、学生の皆さんからよく聞かれる質問があります。
「データ分析や資料作成、プログラミングまでAIができるようになっている中で、コンサルタントという仕事の将来性をどう考えていますか?」
確かに、膨大な情報を集めて整理したり、綺麗なプレゼン資料を作成したりする作業は、すでにAIが人間以上の精度とスピードでこなせる時代になりました。
しかし、実際のビジネス現場に立つ立場としてお伝えしたいのは、どれほどテクノロジーが進化しても、最後の最後で成果を左右するのは「人間同士の関わり」だということです。
今回は、船井総研の製造業向けコンサル部門で活躍している熊谷さんが担当した、ある製造業企業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)事例をご紹介します。
高額なシステムに頼らず、現場の小さな困りごとを解決しながら会社全体のDX化・業績向上まで導いたプロジェクトから、これからの時代に求められるコンサルタント像をお伝えします。
紙と手集計ばかりのアナログな現場~ある製造現場のリアル~
熊谷さんのコンサルティング先は、とある製造業企業様です。
工場内では高い技術力を持つ職人の方々が働いている一方で、日常の管理業務は極めてアナログな環境でした。
作業日報、抜きや梱包の記録、毎日の成形予定等、現場で発生するあらゆる情報を紙に手書きし、分厚いバインダーに挟む。そして夕方になると、現場のリーダーがその紙の束を回収し、1枚ずつExcelへ手入力で転記していました。
不良品の発生数や機械の稼働状況を把握するためだけに、現場のリーダーが毎日何時間も手集計に追われている状態でした。
なぜ全体の基幹システムではなく「小規模アプリ」だったのか
企業の業務効率化を進める際、数千万円をかけて会社全体の基幹システムを一気に一括導入する手法は一般的です。しかし、せっかく導入したそうした大型システムが「現場で使いこなされず、結局誰にも使われない」という事例は後を絶ちません。
担当コンサルタントの熊谷さんが重要視したのは、システムの機能性以上に「現場で働く人たちの気持ち」でした。
長年慣れ親しんだ手書きの運用を変えることに対して、現場の作業員の方々は少なからず不安や抵抗感を持っています。そこに上から「明日からこのシステムを使ってください」と指示を出しても、現場の負担が増え、反発が生まれるだけです。
DXを成功させる上で本当に越えるべきハードルは、システムの開発技術ではなく「使う人たちの心理的ハードル」にあります。
「使えて便利だ」を積み重ねる、小規模DXのアプローチ
そこで熊谷さんが選択したのが、現場が日々の業務で最も負担に感じている部分から段階的に改善していく「小規模DX」でした。
ここで効果を発揮したのが生成AIの活用です。
従来であればアプリの試作品を作るまでに数か月を要していましたが、コード生成AIを開発プロセスに組み込むことで、わずか数日で試作アプリを構築できるようになりました。
試作品を素早く現場に持ち込むことで、「ここをこう変えてほしい」という現場の声にその場で対応できる体制を整えたのです。
AIを活用したスピード開発と、現場の負担を減らした3つのアプリ
1. 作業日報アプリ
紙への手書きと夕方のExcel転記作業を廃止。作業員がタブレットから直接入力することで、集計作業を即座に自動化しました。
2. QR在庫管理アプリ
スマートフォンのカメラでQRコードを読み込むだけで、原材料の入出庫と在庫数がリアルタイムでシステムに反映される仕組みを構築しました。
3. 生産計画アプリ
現場端末からの進捗入力により、工場全体の製造スケジュールがダッシュボード上で一目で把握できるよう整えました。
現場の「点」の改善を、工場全体の「業績アップ」につなげる
ポイントは、最初から完璧なシステムを目指してすべてを一気に変えようとしなかったことです。「転記作業がなくなった」「在庫を探す時間が減った」という目に見える変化を通じて、現場に「仕事が楽になった」という実感を持ってもらうことを優先しました。
現場でアプリが使われるようになると、毎日発生していた集計作業の時間が削減され、現場リーダーが本来行うべき品質管理や技術継承に集中できるようになりました。
さらに、一つひとつのアプリのデータを裏側で連携させたことで、工場全体の稼働状況がリアルタイムで可視化され、無駄な停止時間が減少しました。
その結果、工場の生産能力向上や業務効率化が実現し、クライアントの生産性向上および業績改善という経営成果に貢献しました。
システムを「作る」のは入口。「定着して成果が出る」まで伴走する価値
このプロジェクトを通じて見えてくるのは、「DXの価値は開発そのものではなく、現場での運用定着にある」ということです。
構想を描いたり、システムを完成させて納品したりすることは、あくまで支援のスタート地点に過ぎません。
船井総研が最も大切にしているのは、仕組みが現場に馴染み、実際に使われて業績が変わるという「運用の定着」まで責任を持つ姿勢です。
実際の支援現場では、操作説明会を開催して終わるようなことはしません。コンサルタントが工場内を歩き回り、アプリを使っていない作業員がいればその場で話を聞き、操作をレクチャーします。不便な点があれば、その場でアプリの仕様を修正して見せることもありました。
コンサルティングのゴールは、アプリを納品することではなく「クライアントの業績が上がること」です。どれほど優れたツールであっても、現場で使われなければ経営上の価値は生まれません。
現場の温度感を感じ取り、泥臭く人と向き合いながら組織の行動を変えていく。このプロセスにこそ、AIには決して真似できない「人間がコンサルタントとして関わる本当の意味」があります。
現場を動かす「DXコンサルタント」への道
船井総研では、今回ご紹介したような現場密着型のDXプロジェクトを牽引する「経営コンサルタント」の採用を行っています。
「DX支援」と聞くと、「理系でプログラミングの専門知識がないと難しいのでは」と不安に思う方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、文理不問・IT未経験からスタートして活躍しているメンバーが数多くいます。実際、文系学部出身の先輩社員も現場の第一線で多数活躍しています。
入社後に目指せる「FDE(フィールド・デジタル・エンジニアリング)」という専門性
船井総研では、現場に深く入り込んでDXを成功に導くコンサルタントの役割を「FDE(フィールド・デジタル・エンジニアリング)」というひとつの目指すべき姿として捉えています。
アプリの基本的な設計やコード構築の多くはAIを活用して行えるため、入社前に特別なプログラミング資格や開発スキルを持っておく必要はありません。必要な知識や最新AIツールの活用法は、入社後の研修や実際のプロジェクトを通して身につけていくことができます。
DXコンサルタントに何より求められるのは、現場で働く人たちの話に耳を傾ける姿勢と、「現場をよくしたい」と相手の課題を一緒に解決しようとする熱量です。
デスクの上で分析レポートを作成するだけでなく、クライアントの現場に入り込み、課題の整理から仕組みの導入、運用の定着までを一気通貫で担当する。自分の関わりによって現場の行動が変わり、企業の業績が伸びていく手応えをダイレクトに感じられる仕事です。
おわりに——人の熱量で、企業の未来を変えていく仕事
「AIに仕事が奪われるかもしれない」と不安に思う必要はありません。
新しい仕組みを考え、AIなどの最新ツールを道具として使いこなしながらも、最終的に現場の人たちの意識を変え、組織を動かすのは人間の熱量です。
・「作った仕組みが現場でどう使われ、どう成果につながるかまで責任を持ちたい」
・「テクノロジーと人との関わりを通じて、企業の課題を根本から解決したい」
そう感じた方は、ぜひ一度船井総研のイベントや選考にお越しください。
現場に入り込み、泥臭く成果を追求するコンサルティングの面白さを、社員の生の声を通してお伝えします。
皆さんのご応募を心よりお待ちしています。